群馬県立土屋文明記念文学館


県立文学館編集「上毛三山シリーズ文学紀行 三部作」完結!!


第一弾 「あゝこれ山 赤城山文学紀行
第二弾 「青き上に 榛名・伊香保文学紀行
第三弾 「妙義の峯に 妙義・磯部文学紀行
《販売》 当館ミュージアムショップ及び県内主要書店
          ※ 通信販売もしています

第一弾 「あゝこれ山 赤城山文学紀行」(発行2007年10月30日)
定価》 2,057円(税込)
 あゝこれ山そらを劃りて立てるもの 語らずおろかさびてたつもの  高村光太郎「赤城山の歌」より

  赤城山・・・裾野を長く引く美しい姿と山から吹きおろす空っ風は、「上毛かるた」にも詠まれて、県民の精神風土を育んできました。
  文学との関わりは深く、万葉の時代から現代に至るまで多くの作品の舞台となりました。
  幸田露伴や与謝野晶子、高村光太郎らの著名な文人達が、赤城の自然や風物を愛し、その感動を歌や小説に表しています。
  中でも志賀直哉の『焚火』は、大沼畔での体験を詩情豊かに描いた作品として有名です。
  本書はその他の群馬県出身の作家の作品を含め全46編(近現代の小説や随筆、紀行文36編・詩10編)を紹介する赤城山文学紀行です。

《主な作者と作品》
 ◎小説等
   志賀 直哉「焚火」
   幸田 露伴「地獄渓日記」
   高村 光太郎「赤城相聞歌」
   与謝野 晶子「夏の旅(抄録)」
 ◎詩
   室生 犀星「赤城山」
   東宮 七男「冬の赤城山」
   高橋 元吉「赤城根」

 他の作者
   田山 花袋、山村 暮鳥、草野 心平、猪谷 六合雄、岩澤 正作、今井 善一郎、佐藤 惣之助、岡本 かの子など・・・


第二弾 「青き上に 榛名・伊香保文学紀行」(発行2008年7月12日)
《定価》 2,262円(税込)
 青き上に榛名を永久の幻にいでて帰らぬ我のみにあらじ  土屋文明「五万分一地形図榛名山」より

  榛名・伊香保といえば、蘆花や夢二の文学があり、二人にとってこの地は作品を生み出し、精神の傷を癒す「場」でもありました。
  蘆花の小説「不如帰」は、明治文学屈指のベストセラーとなり、多くの読者を魅了し、執筆の宿、伊香保温泉郷を全国に知らしめました。
  榛名冨士を背に、湖畔には美術研究所の実現を目指し、理想郷を求めた夢二の歌碑があります。
  二人の他に、伊香保温泉は、詩人、歌人、俳人、小説家たちが訪れ、逗留し交流をしました。
  夏目漱石、大塚楠緒子、寺田寅彦、木下尚江、三遊亭圓朝、十返舎一九、与謝野晶子、大町佳月、島崎藤村、島崎藤村、小林一茶、高浜虚子、谷崎潤一郎、横光利一、林芙美子、佐藤惣之助、齋藤茂吉、等々、榛名・伊香保は、文人達の作品の舞台としても、また、魂の癒しの地としても描かれています。
  群馬県出身の平井晩村、田山花袋、山村暮鳥、土屋文明、萩原朔太郎、村上鬼城、吉野秀雄、佐藤垢石、森田素夫、金鶴泳、神保治人、等々、望郷と愛惜の詩や小説やエッセイを残しています。
  この「青き上に 榛名・伊香保文学紀行」は、榛名・伊香保に魅せられた文学者たち46人の47作品を収録しており、中にはこの本でしか読むことの出来ない作品もあります。

《主な作者と作品》
  司馬遼太郎「北斗の人(抄)」
  林芙美子「浮雲(抄)」
  夏目漱石「伊香保からの手紙」
  室生犀星「美しき旅について(抄)」
  谷崎潤一郎「萩原君の印象」
  与謝野晶子「伊香保の街」
  竹久夢二「山河相聞」
  斎藤茂吉「伊香保」
  土屋文明「伊香保沼」
《この本でしか読めない作品と作者》
  三遊亭圓朝「霧隠伊香保湯煙(抄)」
  土屋文明「枯野」
  大塚楠緒子「湯の香」
  金鶴泳「死の匂い」
  十返舎一九「方言修行金草鞋(抄)」
  木下尚江「山居雑感(運動会)」
  他 8人8作品


第三弾 「妙義の峯に 妙義・磯部文学紀行」(発行2009年9月19日)
《定価》 1,851円(税込)

岡田芳保「巌が思惟する―序文―」

  榛名春赤城夏妙義を秋の姿かな    子規

 上毛三山は群馬を代表する山々である。毎日見ている山である。朝な夕な私たちの体の中に溶けこみ、刻みこまれている懐かしい風景である。

  赤城は幽邃(ゆうすい)なり
  榛名は温順なり
  妙義は奇警斬新なるが如し      と詠われる。

 山々には、青く高い空があり、大地は広がり、水が流れ、風が吹き、宇宙がある。
山には山を領(おさ)める神があり、山名になったと考えられている。
宇宙と身体がひとつになるところに信仰が生まれた。
上毛三山は山嶽信仰の山でもある。

 妙義は、白雲山、金洞山、金鶏山の三山を総称した山で奥が深い。
昔は、妙義、妙喜、妙巍とも書かれ、江戸時代に妙義山に一定したと言われる。
怪奇な巌の姿は、見る人々を不穏にする。巨石は神であり、信仰されたのである。

 妙義にも豊かな文学があった。そして古くから多くの文人墨客が往来した。
曲亭馬琴、三遊亭圓朝、幸田露伴、徳冨蘆花たちを引きつけた。
大砲岩、虚無僧岩、轟岩などの岩塊がそそり立ち、岩肌の作り出す自然景観は明巍であり巌の胎内をくぐるような石門が五ヶ所もある。
  ―峨峨たる巌蓮りて、虚空に峙つ妙義山―  であり
 西の耶馬溪や寒霞渓に並ぶ日本三奇勝の一つである。怪奇なる巌は、春筍の如く蔟立し、天を切りとり摑み、かみつくような形状が連なる姿は、巌が思惟している。

 若き画家の青木繁や坂本繁二郎もスケッチに訪れている。
俳人、歌人、詩人、作家たちは妙義山を文学に書いた。
 島崎藤村や正岡子規の書く妙義の描写は、それぞれの感性や個性が巌山に触発されて……ぞんぶんに出ていて面白い。
徳冨蘆花の「妙義」の描写は絵画を見るような文体である。

―其他あらゆる異名畸形の巌は、前後左右、高低遠近、正面側面、背面横面、並び重なり、仰ぎ欹ち、造形彫刻の手腕、今更に驚心駭魄を禁じ得ず候。況してや秋は此奇観に美観を添へ、向の絶壁に深紅の楓樹の宙乗したる、谷の黄葉に映る青松の葉数もよまるゝ、立体の絵と伝はむか、色ある詩と伝はむか、静寂着したる自然の美は中々に吾が心を悩まして、不穏の感を覚え候。―

 大町桂月、岡本綺堂、木下尚江、田山花袋、等々の文も味わい深い自然描写の文学である。登山家の小島烏水や武田久吉、イギリスの登山家ウォルター・ウェストンの「妙義山、筆岩攻略」も初めて知った。また、ドイツの建築家ブルーノ・タウトの「妙義神社」もユニークな日本文化論である。
その他、群馬にゆかりのある若山牧水をはじめ、村上鬼城、村上成之、吉野秀雄、童謡詩人の林柳波の「三つのお山」(上毛三山の伝説から)もなかなか読む機会がなかった童謡である。
 民俗学の都丸十九一の「妙義の古名ハコソ」や、民話、童謡、昔話まで……よくぞ集めた妙義・磯部のアンソロジーである。

 すでに出版されている「あゝこれ山 赤城山文学紀行」「青き上に 榛名・伊香保文学紀行」に続く「妙義の峯に 妙義・礒部文学紀行」であり、併読されることをお薦めします。
 上毛三山の文学紀行が多くの関係者の協力により、ここに結実したことを感謝します。
 この三冊のアンソロジーをテキストとして今後より豊かな上毛三山の文学紀行がいつの日か編まれることを念願します。

(おかだ よしやす、群馬県立土屋文明記念文学館館長(当時))