群馬県立土屋文明記念文学館

特別館長日記

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白米千枚田

<白米千枚田>

<文明歌碑>

 10月20日、長谷川誠主幹とともに、石川県輪島市の白米千枚田を訪ねました。そこは、世界農業遺産、日本の棚田百選、国指定文化財名勝に指定されています。今年千枚田を望む道の駅千枚田ポケットパークに、土屋文明の歌碑が建てられ、3月27日に除幕式が行われました。

 一わんにも足らぬばかりの田を並べ継ぎて来にける国を思ふも

 海に面した斜面に並ぶ棚田を目の当たりにし、苦労しても少ない米しか取れないであろう狭い田んぼをいくつも並べ耕し続けてきた能登の人々の生活に強く心を動かされた文明が詠んだ歌です。
 この歌には、人々の生活や社会のあり方を見つめて歌を詠む文明の特徴がよく出ています。詠まれたのは、昭和15年12月ですが、戦後主張された「第二芸術論」に対抗するものをすでに備えていたことが分かります。
 歌碑の建立にあたっては、一昨年、輪島市産業部長兼観光課長の永井一成氏、能登半島広域観光協会相談役の藤平朝雄氏に、土屋文明記念文学館までお越しいただきました。
 お二人のお話をお伺いし、文明の歌が地元の人々にも深い感銘を与えていることが分かり、改めて歌人文明の大きさを認識しました。
 生前土屋文明は歌碑の建立をあまり好まなかったので、ご遺族の了解が得られるか心配していましたが、了解が得られたことをうれしく思いました。

 前日、福井ふるさと文学館を訪ねた後、金沢を通りすぎ和倉温泉で一泊して、翌日レンタカーで白米町へ行きましたが、能登半島の奥深さがよく分かりました。文明は万葉集調査のために訪れたようですが、当時の交通事情を考えると、その熱意がよく分かります。
 当日は雷雨模様で、雨と風が強くなったり、弱くなったりする状況でした。弱まったときに車から出て、歌碑と千枚田の写真を撮りましたが、途中で風と雨が強まったりしたので、ずぶぬれになりながら、何度か繰り返し、何枚かの写真を写すことができました。
 能登の自然の厳しさを私たちも味わっているようで、いやな気持ばかりではありませんでした。

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