群馬県立土屋文明記念文学館

特別館長日記

HOME 特別館長日記令和2年11月3日(火・祝)

令和2年11月3日(火・祝)

 山田良春君の歌集に  老いぼけて若き君らの作り出す新しき歌見るは楽しも(『青南後集以後』)

 8月に、文明が大正11年から13年まで高等女学校の校長を務めた長野県松本市を訪ね、明治45年から創業している和菓子屋の梅月菓子舗さんに立ち寄りました。土屋文明に関する情報があったら知らせていただきたいとお願いしておいたところ、このたび貴重な書籍を送っていただきました。

 故山田良春氏が平成元年3月に92歳で執筆された手書きの自伝『歌への熱き思い』です。
「月々長野へ来られる時に歌を見て頂いて先生の第二歌集「往還集」の原稿を書いて上げた。先生が長野へ来られなくなっても続けて歌を見てもらったから月々のアララギに余の歌がのった。」

 「その夜先生の宿られた宿屋で慰労会をした時に土屋先生から歌を書いてもらった その歌は  春日照る荒野の道を登り来て猪名水海静もりにけり  その翌日先生は南佐久から峠を越えて上州へ行かれたがその時余がバナナを十本ばかり買って上げて見送りをした。」

 山田氏は、大正から昭和にかけて、長野県の小中学校に勤務しながら、文学活動をされていました。  自伝には、島木赤彦、土屋文明との交流が詳しく記されていて、大正時代から昭和時代前期にかけての「アララギ」の様子が窺われます。

 没後30年が過ぎ、土屋文明の生前を知る人も少なくなってきました。生の情報を集める最後の時期を迎えているのだと思います。

カテゴリー
最近の投稿
月別アーカイブ